忍者ブログ

the vernal sunshine

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

        
        
        
        
        

【爆★判/昴沙】カップ

すばさきです。
最近仲良くして下さっている方の呟きを見て浮かんだネタ。

拍手[0回]

        
        
        ~*+* つづき *+*~
        
        

今日は久しぶりの2人揃っての休みだった。
沙希の要望もあって、沙希を俺の部屋へ呼ぶことになったのは良いが
来てからずっと沙希がそわそわと落ち着かない。

「沙希、何が気になってるんだ?」

ソファに座る沙希の横で、見ているテレビの画面から視線を移して問えば
奇妙な声と共に視線を宙に彷徨わせた沙希がチラリとこちらを見上げてくる。

「その・・・。」

いつもははっきりと何かを言ってくる沙希が、戸惑ったように上目遣いで
言い辛そうにしている様子は若干目の毒ではあるのだが根気良く待ってみれば
一度俯いてから勢い良くこちらを見ていつもの強い視線でこう言ってきた。

「コーヒー、淹れ方を教えてください!」

一体何を・・・と思ったが、そういえば以前沙希がこの部屋に来た時は
俺がコーヒーを淹れてやったんだったと思い出し、いつかは自分が淹れたいと
言っていた沙希を思い出してついつい緩んでいく口元をそのままに頷けば
沙希の曇っていた表情が一瞬で晴れて笑顔で礼を口にしてくる。
その眩しい笑顔に、思わず目を細めながら道具は高い場所に置いてあるからと
一緒に台所に行けば嬉しそうに前を跳ねる沙希の背が目に入る。

「カップは私が出しますね。」

割合低い位置においてあるカップの方へと向かいながら沙希が言うのに
ああ、と頷いて俺はサイホーンなどを用意していればカチンと陶器のぶつかる音が
耳に入って反射的に沙希の方を見る。
沙希は、手近な台がなかったのか椅子も何も使わずに沙希よりも少し高めの位置に
今日に限っては若干奥に入り込んだカップを背伸びして取ろうとしている。

「おい、危ないから俺がと・・・沙希っ!!」

代わりに取ると声を掛けかけた途端、伸ばしすぎた手につま先立ちの足が
耐え切れなくなった沙希がふら付いて手に掴んでいたカップを落とすのが見えた。
俺は、サイホンを置こうとしていたところでとっさに乱暴にソレを台へ置くと沙希に手を伸ばした。
沙希までの距離はたいしたことはなく、たった一歩の距離だったが正直肝が冷えた。
ふら付いた身体がそのまま食器棚のガラスに突っ込みそうに見えたからだ。

「っの馬鹿っ!!取れないなら無理に取ろうとするんじゃないっ!!」

間一髪で、沙希の腕を掴んで抱き寄せれば自分でもぶつかると思ったんだろう強張った身体が
抵抗もなく腕の中に落ちてきて、驚いた沙希の手から滑り落ちたカップが床で形を失った。
破片は飛び散った破片も、引き寄せたことで避けられたのか沙希に怪我はないようで
思わず抱き寄せた状態からさらに強く抱き込んで、深く息を吐けばビクリと揺れる身体に
とっさの判断とはいえ自分の行動を思い知らされて内心焦る。
俺は何をしてるんだ・・・と、思いはすれど沙希があのまま突っ込んだらという嫌な考えに
腕を緩めることも出来ずそのまま沙希の後頭部に自分の額を寄せてもう1度息を吐く。

「取れないなら、俺を呼ぶなり近くの椅子を引き寄せるなりすれば良いだろう?
 なんでいつもそうやって無茶をするんだ。」

初めて沙希と逢ったあのゲームでも、身内が囚われていたとはいえ命がけのゲームに
女だてらに立候補してきたりと無茶ばかりすると思ってはいたが・・・。

「近くに俺が居るんだから、無茶をする前に呼んでくれ。」

心臓が持たん・・・と、呟くように言えばごめんなさいという小さな声と共に
僅かに身動きする沙希を解放するために腕を緩める。
当然だが、破片があるその場から庇うように俺の背後へと誘導して・・・だ。

「ごめんなさい、今度からはちゃんと呼びます。それと、カップも・・・。」

腕を放してもその場に留まって、しゅんと項垂れる沙希の姿は庇護欲と嗜虐心を同時にそそられ
それら両方を抑えるのに結構な理性を要求される。
そんな姿をいつまでも見ていられるほどに、理性の紐も硬くはなく早々に根を上げると
丸くさわり心地の良い頭へと手を置いてぐりぐりとなでてやる。

「気にするな。丁度良いから、今から買いに行くか。
 沙希の専用のカップも買って置いておけば良いだろう?」

そう言ってやれば、大人しく撫でられていた沙希の顔が上がって上目遣いに見上げてくる。
だからその表情を止めろ・・・と、思うが口にはせず軽く頷いてやれば恥ずかしそうにはにかんで
飛びついてくるのを受け止めて背中をぽんぽんと撫でてやる。

「ほら、出かける準備をしてこい。ここは俺が片付けるから。」

怪我をさせたくはないと、そう言って背を押せばソレは嫌だと首を振ってくるのに
僅かに考えて冷蔵庫を指差してさらに付け足す。

「夕飯を作ってくれるんだろう?ここ暫く買い物も行っていないから
 ついでに買ってこればいい、足りない材料とかも調べてくれ。」

ほら、と背を押して言えば今度は渋々だが冷蔵庫に向かう沙希にほっと息を吐いて
割れて飛び散った破片を近くにあった雑巾を濡らして拭き集める。
何度か繰り返して、最後にもう一度真新しい濡らした雑巾で拭き上げて大丈夫だろうと頷けば
丁度タイミング良く戻って来た沙希が少し難しい顔で俺に聞いてくる。

「昴流さん、最近何食べてたんですか?
 足りないどころか空っぽですよ、冷蔵庫の中!!」

外食がコンビニ弁当だったなと正直に答えれば、ぷくっと頬を膨らませる沙希に
その頬を突きたい衝動にかられるが自重しながら肩を竦ませる。
そうして、とりあえず買い出しに行こうと促して上着を手に外へ出ると沙希の寒そうな手を取って
一緒にポケットに入れながら近くの量販店へと足を向ける。
照れて口が軽くなる沙希の近況を聞きながら、俺は日ごろのストレスが消えていくのを感じて
僅かに緩む口元をそのままに、その日1日目一杯休日を満喫した。

PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Copyright © the vernal sunshine : All rights reserved

「the vernal sunshine」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]